2004年 新潟県中越地震被害調査報告

はじめに

 10/22,23の二日にかけて中越地震の被害調査を行った.本調査は地形と地震動の関係を主要なテーマとしており,建物被害や墓石の倒壊など地震動尺度となる被害と周辺の地形に注意することとした.

 和南津トンネル以北は車の乗り入れができず[10/23現在]調査範囲が限られることから,調査範囲を川口町,小千谷市に絞り,10/22に魚野川,信濃川の東岸,翌日西岸の調査を行った.


和南津・野田・中山地区 [10/22]

・新幹線橋梁 高さ10m,直径7mほどの橋脚の高さ2mほどのところで約1mに渡って曲げ破壊が生じた.周囲のコンクリートの剥落(厚さ10cmほど),帯鉄筋の脱落が生じている.写真[2]の破壊部分右側に主筋の端が現れており,破壊が主筋の段落とし部に生じたことがわかる.

・中山地区 台地上に位置しており,野田地区と比べて建物被害は目立たなかった.魚野川沿いにたつ寺院・林興庵の本堂の傾斜,川岸の崖崩れなどが生じていた.このお寺での墓石の倒壊率は70%程度(33/50)であった.

[1] [2] 新幹線コンクリート橋脚の破壊
[3] 野田地区 倒壊家屋
[4] 中山地区 林興庵裏手の崖崩れ


川口市街地 [10/22]

・震度7(計測震度6.5)の観測された川口市街地では多くの家屋の傾斜,倒壊が生じた.多くの建物が北西の方向に傾斜あるいは倒壊している.地元の人によると,主に本震による被害とのこと.また,川沿いの範囲は昔(堤防のできる前)田圃であったとのことであるが,岩盤は比較的浅いとのことであった.市街地の北東には山地が迫っており,信濃川の対岸からは3箇所ほど大きな崖崩れの跡が見られる.

[1] JR飯山線 よう壁のはらみだし
[2] 川口市街 倒壊家屋,南西方向に倒壊しているものが多い
[3] 川口市街 新しく,一階にRCの車庫をおく家屋は比較的損傷が少ない
[4] 川口市街 宝積寺鐘楼
[5] 川口市街北西部の崖崩れ


武道窪・相川・荒谷地区 [10/22]

・武道窪・相川地区は17号線から北東にそれて台地を上がったところに位置する.特に台地の最上部の山際付近の建物被害が著しく,建物の傾斜・倒壊方向は山方向(北東〜東)のものが比較的多かった.また,道路やため池の堰堤にも変状が生じている.付近の墓石の倒壊率は80-90%(21/25)であった.一方,台地の下部地域では倒壊家屋は少なく,山際の堆積地盤で震動が激しくなる「渚現象」を思わせる被害状況であった.なお,下部地域の墓石の倒壊率は上部と同様であり(8/9),加速度は余り変わらないものと思われる.

・荒谷地区 比較的険しい山間部に位置する.路盤の変状,崩壊や荒谷トンネル内コンクリートの剥落が生じている.トンネルそばの墓石の倒壊率は75%(15/20)であった.家屋の倒壊や大きな傾斜は道路から見る限りはないようであった.

[1] 武道窪地区 地区最上部の農業用水堰堤
[2] 武道窪地区 倒壊家屋
[3] 荒谷トンネルの内壁の破損
[4] 荒谷地区 路盤の変状


国道291, 17, 351号線 (ひ生〜小千谷駅周辺〜天納) [10/22]

・小千谷駅とその周辺 壁や窓の破損が数多く発生している.小千谷駅ではロープが張られ,立ち入り禁止であった.

・天納における国道とJR上越線の地滑りと同様の,路盤の崩壊やよう壁のはらみだしが数多く生じている.

[1] JR小千谷駅
[2] [3] 小千谷駅前 商店街建物外壁の破壊
[4] ひ生地区 上越線路盤の崩壊
[5] [6] ひ生地区 国道291号線の路盤崩壊,マンホールは融雪装置のもの
[7] 天納地区の国道17号線地滑り


西川口地区 [10/23]

・西川口地区は川口市街地の対岸に位置する台地に位置しており,台地を上がる道路側面では崖崩れ(湧水を伴う)が生じていた.地元の人によると台地上の東側の地域では比較的地盤がよい(近くを通る関越道の工事関係者の話の又聞き)とのことで,1km程度離れた川口市街地と比べると家屋の被害は幾分少ないようであった.なお,台地東縁の崖地に位置する寺院・西蔵院における墓石の倒壊率は80%(26/32)であった.

[1] 川口橋から西川口地区に上がる道路崖崩れ
[2] 西蔵院本堂 「要注意」の判定,写真右手はすぐに崖になっている


国道117号線 西倉橋〜片貝〜JR小千谷発電所 [10/23]

・西倉(さいくら)橋を渡たり右折して迂回路をへて国道117号へ至る.国道17号線では路面の変状やよう壁の崩壊などの地盤被害が多く生じている.片貝地区では17号線沿いに住宅が並んでおり,傾斜したり倒壊する被害が生じている.また,国道の路面変状も小規模な谷地形を盛土している部分を中心に多く発生しており,路面の変状の激しいところでは建物被害も大きい.

・国道沿いにあるJR小千谷発電所ではガイシの倒壊,導水路の破損などが見られる.また,導水路をまたぐ国道の橋梁(山辺橋)にも被害が生じている.上部の貯水池(山本調整池,新山本調整池)でも,小規模な地盤変状や堤体の亀裂などがあった.新山本貯水池上部(南西部)の墓地では倒壊率が50%程度(23/46)で他地域より低いが,新しい墓地であり墓石の多くがモルタルとゴムのようなもので接着してあることの効果も考えられる.

・越後川口IC周辺 西川口と同様の台地上に田圃が広がる地域である.ここでは建物が少なく外見上は傾斜などの被害はないようであった.台地の縁を通る道路では路面が崩れてしまった箇所がいくつかあり,このために台地の下に位置する卯ノ木地区は一時孤立していたとのことである.

[1] R117西側の崖は至る所で崩れている


小千谷市西側地区 [10/23]

・西中付近 山本調整池の下には田圃が広がる.その中を通る道路では噴砂あとが見られた.また,農道沿いにはマンホール(融雪設備のもの)の浮き上がりや,通信回線の管路(FRPM管φ800x4mの印字)が30mくらいに渡る浮き上がりなどの液状化による被害が生じていた.

・両新田地区 この当たりは平野の西側に位置しており,山地も近いが,建物の傾斜や倒壊の被害が生じている. なお,武道窪で記したような建物被害の分布は感じられなかった.墓石の倒壊率は薮川(75%(9/12)),時水(85%(78/90))で他地域と同様に非常に高い.

まとめ

本調査を通して次のような地震被害の特徴があった.

1) 崖崩れや地滑りなどの地盤変状による被害が多発していること
2) 建物の被害が密集する傾向があり,このような地域として山地近くの平地,緩い傾斜地もその一つと思われること.

今後,他の地域の被害調査や広範囲の地盤振動特性の調査を行って,地震被害の発生要因を検討していきたい.

謝辞 ご教示頂いた地元の方々に厚くお礼申し上げます.